青夏ダイヤモンド
脩は瞬きを忘れたかのようにじっ、と私を見下ろした。
言ってから気づいたのは、脩が岩佐都に憧れていたという話は沖田君から聞いた人づての話だったということ。
もしも、脩がそんなことをつゆほども思っていなかったら、私はとんだ自意識過剰者だ。
脩の視線から逃げるように、目を伏せると、息を吹き出す音が聞こえた。
「俺が女だったら惚れるな」
「え・・・?」
「男前な誘いだな。どこにでも投げて来いよ。鷹野の球、何でも取ってやる」
ミットの中に勢い良く拳を打ち付けると、気持ちの良い乾いた音が響いた。
「どこにでも、って、ストライクゾーンはちゃんと狙えるよ」
「過去の事は無しなんだろ。初心者が天狗になるなよ。言っておくけど、俺は初心者にも甘くねぇから」
自分で言っておいてなんだけど、脩の態度が勘に触る。
これは意地でも狙ったストライクゾーンを逃すわけにはいかないと、闘志が燃える。
脩の策略にハマっているのかもしれないと思いつつも、脩の掛け声と共に他のクラスメイトも守備位置に駆け出すのが見えて、私もそれに倣う。
マウンドに立った私に向かって、脩はミットを叩く。
その前に立ったバッターは小中と野球経験のある男子。
今の自分がどれだけ通用するのか確認するためには申し分無い相手だと思った。
私は大きく腕を振り上げ、思い切り左足を踏み込んでボールを前に突き出した。