憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

「あいつの親父はな。
…………静海さんを犯したんだよ。

つまり七海は、見ず知らずの犯罪者との間に生まれたガキだってこと」


「っ……!!」


村上さんの言葉にあたしは目を見開いた。


頭が真っ白になって、体の震えが止まらなかった。


嘘だ……あたしのお父さんが、お母さんを……?


「えっ、それヤバすぎないっすか!? 七海ちゃん、何にも知らないんすよね?」


「多分な。まぁ、薄々自分が静海さんに愛されてないのは気づいてんじゃね?」


「そうすよね。自分と無理矢理ヤッた奴との子なんて……でも、なんで産んだんすかね? 静海さん」


「さぁ? よくは知らねぇけど、罪悪感と……あとは対面を気にしたんだろ?

ガキをおろしたなんてバレたら、それこそ非難の的だろうからな」


「まぁ、でも七海ちゃん、ティーンモデルとしては活躍してる方っすよね。ほら、多少の恩恵というか? 一応、少しは役にたったんじゃないんすか?」


「ふっ、それも今では欠陥品になったけれどな。あんな傷のついた顔、静海さんもさぞ失望しただろうぜ」


村上さんはそう言って笑った。


「ははっ、そうっすね。そんな欠陥品のために心配する振りしなきゃいけないなんて。つくづく静海さんは名女優っすよ」


二人の笑い声が病院の廊下に響く。


「…………」


肩を震わせ、あたしはぎゅっと唇を噛みしめた。それでも堪えきれなくなった涙が頬を伝い、一筋、流れ落ちた。
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