御曹司とおためし新婚生活


「す、すみませ、ん?」


困らせてしまったのは確かな様子なので謝ると、東雲部長は額から手を離し、その整った顔に苦笑を浮かべて私を見つめる。


「褒めてるんだよ。お前が不意打ちで出してくる素直さが可愛いって」


可愛い。

そんな言葉、東雲部長の口から聞けるなんて思わなくて、熱くなった頬と上がりっぱなしの心拍数を落ち着けようとグラスに口をつけた。

なんだか、今の雰囲気なら聞けそうな気がする。

答えてくれるだろうか。

記憶を失った夜に、東雲部長が仄めかしていた言葉の意味を。


「あ、の」


思ったよりも小さな声になってしまい、私は喉をこくりと静かに上下させる。

そして、勇気を総動員して唇を動かした。


「あの夜……部長は、何を確信したんですか?」


あの夜というフレーズだけで部長は理解してくれたようで、けれど短く呆れたため息を落とす。


「お前、本気でまだわからないのか?」

「わからないというか、自信がないというか」


鳳さんに対しての行動を自分の都合よく解釈したならば、東雲部長は私と同じ気持ちを持ってくれている……と、そう考えたりもするけれど。


「部長は、女性を信用してないのでしょう?」


そんな人が、私を好きになるなんて奇跡みたいで。

だからあり得ないと思ってしまうのだ。


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