御曹司とおためし新婚生活
疲れか、安堵か。
きっとどちらもだろう。
夜空にぽっかりと浮かぶ満月を見上げながら、私はふと思い浮かんだことを口にする。
「もしかして、この家もお兄さん経由で見つけたものですか?」
「向日にしては鋭いな。そうだ。二番目の兄に訊ね、紹介してもらった」
「さりげなく私をディスりましたね」
「間違ってはいないだろ」
悠々とグラスを傾ける部長は、軽く睨む私を見て口元に優しい笑みを浮かべた。
トクンと、くすぐったそうに胸が鳴る。
……こんな風に微笑みを見せてくれるのが、凄く嬉しい。
「私、部長の笑った顔、好きです」
思わず声にしてしまい、目を丸くした部長の様子に我に返る。
でも、これが飾らない私の本心だから誤魔化さずにはにかむと。
「はぁーーーー……」
東雲部長は深いため息と共にグラスを持たない手で額を覆って項垂れる。
「お前のそれは無意識なんだろうが、だからこそ質が悪いな」
少し掠れた低い声で呟いた彼の耳はほんのりと朱を差していて、照れているのだとわかった。