曖昧なポジション
私だけに聞こえる声でささやくように語る水沢は、慎重に言葉を選んでいるようだ。
仕事以外で真剣な水沢を久しぶりに見たかも、なんて思ってたらふいに距離が開いた。
突然、解放された私は瞬きを繰り返す。
もう少し体温を感じていたかったのに。
なんて心の中で文句を呟ける私は、少し余裕が出てきたのかもしれない。
「ナツミ……」
反対に余裕のなさそうな声を絞り出す水沢は、自分の髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。
仕事が上手く行かない時の、彼の癖だ。
「カッコイイことなんて言えないけど。シンプルでもありきたりでも、俺が伝えたい言葉はひとつだけ」
2人の視線が絡む。
「ナツミが好きだよ」
私が一番、聞きたかった台詞。ううん、聞けるなんて期待していなかった愛の言葉。
「私も、好き」
そう即答した私に水沢はいつもの数倍、優しい笑顔をくれた。
「付き合おうか」
「はい」
水沢の顔が近付いてきて、高い鼻が触れた。
これから起きることを予期して、
そっと、目を閉じる。