曖昧なポジション
書類を束ねる手を止める。
「水沢、」
「なに?」
「どうして、私を誘うの?」
「映画か?見終わった後に、盛り上がれるのはおまえだけだから」
「他の人、とは盛り上がらないの?」
他の人、とは彼女を指すのだが、
水沢はそれに気付かないようで平然と答えた。
「みんな俺に合わせるんだよ。つまらない映画なのに、わざと感動したフリしたり。価値観はそれぞれ違うのに無理矢理、合わせるなんて馬鹿みたいだろう」
私とあなたの価値観は、少しは一致するところがあるのだろうか。
「その点おまえは、つまらないものははっきりそう言うから一緒にいて楽しい」
一緒にいることが楽しいだなんて殺し文句を、
どうして好きでもない女に、言ってしまうのだろう。
悪態をつく反面、嬉しい言葉だった。
私はあなたと同じ目線で、時には異なる価値観で、映画を楽しめる相手なのだろうか。