きっと夢で終わらない
小学二年生の時、仲良しの子がいた。
きっかけなんてよく覚えていないけれど、口数の少ない大人し目の子で、家が比較的近いのもあって登下校を共にした。
他にも仲良しの子はたくさんいたけれど、その子とは特に一緒に勉強したり、遊んだり、おしゃべりしたり、生き物係でクラスの金魚の世話も一緒にした。当時は「親友」の意味をきちんと理解していなかったけれど、きっとそんな仲だったと思う。
でも、三年生に上がると、その子の姿は学校になかった。
両親のお仕事の都合だとか何だかで、春休みのうちに転校してしまっていた。
私はずっと一緒にいたはずなのに、そのことを一言も知らされていなかった。
「杏那ちゃん、一番一緒にいたのに知らないの?」
他の友達にそう聞かれて答えられなかったことに、茫然とした。

あんなに仲良しだったのに、春休みが明ければまたいつものように会えると思っていたのに、その子は何も言わずに私の前から消えた。
私たちは「しんゆう」ではなかったのだろうか、と若干困惑していた私は、きっと性格上言い出しづらかったのだろうと結論づけた。


また親しい友達はすぐにできた。
今度は仲良し4人組になったが、その子たちは前の子とは対照的に明るかった。私たちはすぐに打ち解け、休み時間のたびにおしゃべりをして、放課後は一緒に遊んで、ペア行動や班決め、グループ活動の時はいつも一緒に組んでいた。お揃いのキーホルダーも持っていた。
でも、四年生に上がってクラスが4人ともバラバラになると、その子たちは私をまるで友達でなかったように振る舞った。
廊下ですれ違った時に合図をしようとして、無視されたのだ。
別の友達と連れ立って楽しそうに喋っていて、私の方も他の友達と一緒だったから気づかなかったのかな、と最初は思っていた。
それで後日、お互いだけの時にすれ違った時にも名前を呼ぼうとして、けれど呼びきれなかった。彼女たちは私の横をなんでもなかったように通り過ぎたからだ。
要するに、無視された。

どうしてだろう。
私は何か悪いことをしただろうか。
去年はあんなに笑いあっていたのに。
あんなに仲が良かったのに。
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