長谷川君には屈しないっ!
10分で終わった掃除が終わるや否や他のクラスメイトは、
「上地さん!」
「はい」
「私たちこのあとどーしても外せない予定があって、すぐ行かなきゃなの」
「だから、この数学のノート職員室までお願いね!」
と言い残し、私が何かを言う前に帰ってしまった。
…まぁ、いつものことだから断るつもりもないのだけれど。
そして最後に残った私は、掃除中に開けていた窓の戸締りをする。
最後の窓を確認を終えると、席にかけてあった鞄を肩にかけ、数学のノートを抱える。
よし、帰ろう。
そう意気込んで教室を出たあと階段を降りて行く。
階段を降りている間、殆どの人が下校するか部活に行ってしまうため、他の生徒とすれ違うことはなかった。
職員室に着いた私は、担当の先生の机にノートを置き、すぐに職員室を出た。
「失礼しました」
そう言ったあと、小さく息を吐く。
ノートというものは割と重量があるもので、クラス全員部となるとそこそこの労力を使う。
きっと、私から断らないのが都合がいいんだろうな。
「…はぁ」
2回目のため息をつき、歩き出した時だった。
ポッケットに入れていた携帯が勢いよく振動し始めた。
「…!」
携帯といえど普段からあまり使うことがないからか、思わず振動にびっくりしてしまった。
とりあえず確認しようと慌てて取り出すが、焦って携帯を落としかける。
「わ…っ」
なんとか携帯を落下を防いだ私は、急いで画面を見る。
するとそこには『長谷川光輝』と表示されていた。
長谷川君?
「…はい」
「お前今どこ?」
「職員室の前ですけど」
「よし、今から体育館に来い」
「え!?どうし」
「制限時間2分。裏から来い」
「ちょっ、まっ…」
「じゃ」
その言葉を最後に電話は切れてしまった。
ものの10秒程度の出来事。
何か、嫌な予感がする…。
長谷川君のことだから何か絶対に企んでいるに違いない。