長谷川君には屈しないっ!
どうするかなーっとため息混じりに顧問はそう呟いた。
「洗濯ものはともかく、お前らじゃ晩飯もろくに作れない奴が多いからな」
「確かにそうですね」
「え!?キャプテン酷くないっすかぁー」
「じゃあお前料理できんのかよ」
「…できないっす」
「だろうな」
そんな、キャプテンたちの会話を聞いていた時、俺の脳裏に一つの名案が生まれた。
「…つまりは、下心がなくて家事が大体できればいいってことですよね?」
「まぁ、そう言うことになるな」
その言葉を聞き、俺はすぐにあいつに電話をかけた。
そして電話を切ってから数分後。
バンッ!
予想通り、体育館の扉が勢いよく開かれた。
扉の隣で壁に背を預けていた俺は、視線を扉の方に向ける。
そして、ドアを開けた張本人が俺を視界にとらえらた。
「よ」
「よ、じゃな…いですよっ。今すぐあの写真消してくださ…っ」
息を切らしながら途切れ途切れにそう言ったのは紛れもなく地味子だ。
「あの…聞いてます…!?」
地味子がそこまで言いかけたが、すぐに俺の言葉で遮る。
「先生ー」
そして、地味子の左手を掴んで頭上にあげた。
俺の声に部員たちや外にいた女子生徒までもがこちらに視線を向ける。
そして、俺はこう叫んだ。
「2人目見つけた」
side実子
「2人目見つけた」
「…」
視線の集中攻撃を受けた私は、この場の空気にひとつもついていけていなかった。
なんのことですか…?
思わず肩にかけていたバッグを床に落とす。
そして、長谷川君によって持ち上げられた左手。
…このポーズは、何だ?
勢いよく開けた扉の先には、思いもよらぬ光景が広がっていて、
唯一理解できたのがここがバスケ部の活動場ということだった。
そして目を点にしていると、体育館の真ん中あたりにいた先生と目が合う。