あの夏の日の花火
私はアキを抱き上げてリビングに入ると手にしていた会社用のトートバッグとコンビニ袋をテーブルに置く。
いつもの習慣で何よりもまずテレビをつけてから、ソファーの上にアキを下ろした。

リビングといっても私の部屋は玄関を入って短い廊下の両側にトイレと狭い洗面所とお風呂、廊下の突き当たりに6畳のリビング、リビングの片側に小さなキッチン。奥に寝室にしている4畳半の和室があってカーペットを敷いてマットレスを置いた上に布団を敷いている。

トイレとお風呂は別だし、部屋も二部屋あることを考えればOLの一人暮らしにしてはそれなりに贅沢だと思う。 

その代わり建物は古くて壁は薄い。
一月ほど前までは右隣からは毎朝何度も目覚ましの音がしていた。
寝起きが悪いらしく二つの目覚ましが五分おきに平均4回は鳴る。普通なら非常に迷惑な話だけれどもその目覚ましの時間がちょうど私の起床時間とぴったり重なっていたものだから同じく寝起きの悪い私はその音によく起こしてもらっていたものだ。
お隣の目覚ましがあるからと目覚ましの電池を切れたまま二週間放置していたことだってある。



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