ストーカーに溺愛されても嬉しくないんですが。


「つーゆっ!」


わたしを追いかけてきた先輩は、どさくさに紛れてそのままわたしの手のひらをつかんできた。


パッとそれを払いのける。


「クレープで手、ベタベタしてるんで」


「あー、そっか!手、洗お!!」


ちょうどすぐそばに公園があったため、蛇口から流れる水でわたしたちは手を洗った。


先輩が手をプラプラさせて水分を散らしていたから、わたしは仕方なくハンドタオルを貸してあげた。


「ネコ!!可愛い!!つゆみたい!!」


ネコがデザインされているタオルを見て騒ぎ出す。


「それって褒めてます?」


「褒めてる!!」


「そうですか」


「タオルさんきゅ!!」


先輩からタオルを受け取って。

それをカバンにしまって。

カバンのチャックをしめたわたしの手のひらを、

先輩はスルリとすくった。


「じゃあ、行くか」


「............はい」


隣にいる先輩には聞こえないくらい小さな声で返事した。


まあ、今日はクレープおごってもらったし。


ストーカー記念日らしいし。


今日くらい、

手くらいは繋いで帰ってやってもいい。

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