ストーカーに溺愛されても嬉しくないんですが。
しかも、
「あの、わたし今日誕生日じゃないです」
せっかく祝ってくれたところだけど、遠慮なく訂正させてもらおう。
「!?!?」
ストーカーはこれでもかっていうくらい目を丸くした。
「え!?6月23日だろ!?合ってるはず!!」
「いったいどこから入手してきたんですか。
わたしの誕生日はもう終わってますよ。6月3日です」
「え?本気?本気で言ってる?」
「はい」
「っええええ!!!!!うわあああ!!!!!やらかした!!!!!」
「近所迷惑です」
「23だとずっと思いこんでた。どっから出てきたんだよ2!!!!」
そんなツッコミをいれるストーカーに思わず小さく笑ってしまう。
「遅くなってごめん!!」
差し出されるプレゼント。
「...開けていいですか?」
「おうよ!!」
中を開けると、出てきたのは......
雫のバッグチャーム。
「...」
可愛い。
かなりわたし好みだ。
「気に...いらなかったか!?」
「...」
わたしは「ちょっと待っててください」とストーカーに傘を渡し、家のなかに入った。
急いで大きめのタオルを持ってきて、ストーカーの頭に被せた。
「傘とタオル貸すので、今日はもう帰ってください」
「...待ち伏せしてたこと怒ってる!?それとも祝うの遅れたこと!?それかプレゼント気に入らな...」
ストーカーの言葉が止まった。
それは、わたしにギュッと手を握られたから。
こんなにも冷たくなって......
こんな変な人、ほかにいない。
「今日はありがとうございました。プレゼント、すっごく可愛いです。こんな雨の中、待たせてしまってごめんなさい。風邪ひくので、早く帰ってください」
はじめてストーカー...いや、先輩の目をじっと見た。
綺麗な目をしてるんだな。
「~~っ、やばい。もうつゆのこと抱き締めたい。でもびしょびしょだからできない」
「びしょびしょじゃなくてもダメです」
「でもこれだけ許して」
先輩はそう言うと、
わたしが握っていた手を自分が握るように組み換えて、
ゆっくりと上にあげて。
チュッとわたしの手の甲に唇を落とした。
冷たくて柔らかい感触が伝わる。
「な...っ」
「へへっ」
先輩はいたずらっ子みたいに笑って、「また明日!」とブンブン手を振って走っていった。
なんだかキスされた手の甲が熱くジンジンしてくる気がした。