ストーカーに溺愛されても嬉しくないんですが。


「え!つゆ!これ可愛いー!」


昼休み。わたしの机にやってきた麻尋が、わたしのカバンを見ながら言った。


正しくは...カバンについている雫のチャームを見て。


「もらった」


「そうなんだ~、...もしかして...あのストーカーの先輩?」


「まあ」


「へえ~っいいかんじじゃん!」


「なにが」


「喧嘩したのかなって思ってたけどそうではないみたいだね!」


「喧嘩?」


「だって、3日前に用事あるって言ったまま、昨日も一昨日も、放課後つゆのこと迎えに来てないじゃん」


「そうだっけ。てゆかそれが普通じゃない?」


ようやく改心したかあのストーカー。



「まさかつゆ。とんでもなく傷つくこと言ったんじゃ?」


「そんなこと言った覚えないよ」


しかも、3日前最後に会ったとき、間違いなく傷つけることはしていない。


「それに、あのストーカーはちょっとやそっとじゃへこたれな...ってそんなことどうでもいいけど」


「ニヤニヤ」


「ニヤニヤするんじゃない」


「でも、気にならない?いきなり来なくなるなんて」


「別に。このままでいいんじゃない?」


清々するわ。


わたしはケータイのメールをチェックしながら答えた。


「そんなこと言ってー!今日はつゆが迎えに行ってあげなよ」


「はあ?なんでわざわざストーカーのところに自分からーー...」


言いかけたところで、手に持っていたケータイをスポッとだれかに取られた。


「!?」


見上げると、そこに立っていたのは...


茶髪頭の...たしか、ストーカーの友達。



「ちょっと。ケータイ返してください」


人のものいきなり取るなんて、ストーカーの次は盗人か。


「お。次は俺のこと覚えてるみたいだね!

ダレダオマエじゃなくてオマエハコノマエノって顔してる!」


「なんの用ですか?」


ストーカーじゃなくて盗人が来るなんて聞いてないぞ。


「えっとねー、」


盗人は呟きながらわたしのケータイを操作しはじめた。


「ちょっと!ほんとにやめてください!」


取り返そうとするのに、ケータイを高く上げられて届かない。


そして数秒経って、いきなりケータイを返された。


なにがしたいこの盗人?


ストーカーより手強いんだけど?

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