大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





お互い無言で下駄箱までいって靴をはきかえて、外に出る。

隣に並ぼうか並ばないでおこうか迷ったあげく、いつものように隣に並ぶことにした。
背中は、みたくなかったから。


制服のポケットに手を突っ込んでむっとしているくせに、歩くペースは私に合わせていて、長い足が煩わしそうに小さな歩幅をつくっている。




休憩中の運動部の女の子たちが、校門のところに集まっていて、その中の何人かが、千尋の姿をみて、「あー!朝比奈君じゃん、ばいばいっ」なんて声をかけてきたのに、千尋は甘い顔を作ることもせず、まるで聞こえていないとでも言うようにぴくりとも反応せず素通りした。

スルーは、よくない。
そういうことは滅多にしない男なのに。


千尋がそう言う態度をとると気まずいのは私なのに、そういうことを千尋はたぶん分かっていない。
こういうことは、女の子にしか分からないことなのかもしれない。





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