ダンデライオンの揺れる頃
少女は、ふう、と息をついた。

もう、喋るのもおっくうだ。全身から、力が抜けおち、頭が朦朧とする。

声も、それっきり途絶えてしまった。

何を思い出そうとしていたのか、腹を食い破ろうとしていたのか、少女の思考もまとまらなくなっていった。

このまま深い眠りに堕ちて、二度と目覚めることはないのだ、と虚ろに感じた。

少女が少女として、ここに存在するのは、これが最後なのだ。

少女は、何か別の物に変わってしまう。

帰らぬ恋人を待ちつづけたことも。

恋人を待ち疲れて、あまたの男たちと交わったことも。

膨らんだ腹をかかえ、さまよい歩いたことも。

果てしない闇の中に埋没していく。



これが、終わりなのだ。

多分、本当の意味での。
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