ダンデライオンの揺れる頃
少女は、目を閉じた。

その瞼に、さえざえとした天の川が描きだされた。

これは、かの恋人がわたって行った宇宙の様だ。

あの愛しい人が。

あれが来た日、この場所に宇宙船が墜ちた。

それが、すべての引き金だった。

始まりは、恋人を乗せた宇宙船が、海王星でネプチューンにつかまった筈の宇宙船が、ここに墜落したことだった。

ここは、たんぽぽが咲き乱れる、それはそれは綺麗な草原だった。

空気は草の香りがして、高く澄みわたった空には、銀色の翼の宇宙船が見えた。

そして、ここには少女がいた。

恋人の帰りを待ちわびて、毎日ここへ通って来ていた。

その日も、少女はここに居た。
< 52 / 61 >

この作品をシェア

pagetop