ダンデライオンの揺れる頃
『君は、喉がかわいていないかい? そんなふうに寝そべっていたら、じきに太陽が昇って、ひからびてしまうよ』

恋人は、少女にやさしくそう言った。

それが、言葉だったのかどうか、もう、今の少女にはわからなかった。

ただ、自分は今、恋人に抱かれているのだという確信だけが、あった。




少女は、あたたかな大地に、そっと根をおろした。



すこし湿った土が、少女を迎えた。
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