おやすみ、お嬢様
「確かにそうですね。まあ、気長に料理教室にでも行っておいてください」

「え?いいけど。どうしたって自分で教える気がないのはわかったけど。でもなんで困るの?」

「嫌でしょう、私が居なくなってあなたが困るのは。でも、あなたが先なのは私の中では無しです」

でもそれなら一緒にせーのってするしかないよ。宇宙人はともかく。現実だって。

「まあ、あれですね」

「なに?」

「そうなったらとりあえず、人類最後の二人でも目指しましょうか」

そういって、榛瑠は笑った。本当に目指しそうだ、この人は。そして多分最後の一人は自分がなる。だって、私をおいていけるわけがないもの。

それはなんだか、ちょっとだけ幸せな夢のようだ。

「でも今日は宇宙人の侵略はなさそうな日なので、平和に食事をしませんか、お嬢様?」

窓から明るい光が部屋にあふれている平和な日のサンドイッチは、当然のように美味しかった。飲み物は私の注文の結果、オレンジとアイスティーの二層になっていて、これも美味しい。

これに関しては昔っからなのだけれど、気にしないと結構早食いの榛瑠は、自分の分を食べ終わるとゆっくりとコーヒーを飲みながらテーブルの向こう側から私を見ている。

昔からなんでだか彼は、私が食べているところが気に入っている、らしい。

彼の金色の目には私はどう映っているのだろう。……知るのがこわい、知りたくないかも。

そして、その瞳に世界はどう見えているのか。

それは、私が見ているものとはだいぶ違う気がする。

まるで違う世界に生きているくらいに、きっと。

「どうしました?食べながら考え事?」

榛瑠が言う。なんでわかるのかしら。
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