おやすみ、お嬢様
「だって、なんだか人としてまずくない?」女性としてもまずくない?「生き残れないっていうか」振られちゃいそうっていうか。

「今まで気づきもしないくらい困らなかったのに?サバイバルでもするつもりですか?」

榛瑠がジューサーを使いながら言う。オレンジの香りが漂ってくる。

「だって、もしかしたら我が家が食事を作ってくれる人を雇えないような事態になるかもしれないし」

「ありえません。百歩譲って、もしそうなっても私が作るだけです」

「でも、榛瑠が忙しくてできないかもしれないじゃない」

「では、私が人を雇います。今より良い生活を補償しますよ」

「なんか、あやしい勧誘みたい……。でもさ、雇えるような社会情勢じゃないとかさ」

「どんな状況ですか。それならそもそもコメをといでる場合ではないのでは?」

それもそうか……。うーん。でもなんか違うのよね。

「いや、でもそうなったらやっぱり自分で色々できておいた方が」

榛瑠がなんというか呆れた顔でこちらを見る。

「だからどんな状況? あなたがご飯食べられなくて困る状況って。無いから」

「うーん、だからあ、宇宙人が攻めてくるとか……」

あ、今、完全にバカにした顔された。……しょうがないけど。

「それならむしろ起こってみろって感じですけど。それでも私が面倒見るので大丈夫です」

「えー、それじゃあ榛瑠に何かあったら、私すぐ死んじゃうよ」あ、でも。「あ、そうか。残されるの嫌だし良いのか、それで。……わかった。いいことにする」

榛瑠は黙り込んだ。バカバカしくてさすがにあきれ返ったかな?

「そうか、それは困りますね」

はい?
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