夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

「何言ってんだよ、先生!悪い冗談はよしてくれ!」

悪い冗談で、あってほしかった。
「なんてね!」なんて言葉を……。意地悪そうな医師の反応を期待していた。

……けれど。

「歩く事は、問題ありません。ただ、貴方はもう走る事が出来ないんです。残念ですが……」

医師の真剣な表情に、笑いが止まる。
そんなワシに、医師は詳しい事を語った。何故もう走れないのか、とか。ここまでの経過を診て分かった事とか。今後の事とか……。

全く頭に入って来なかった。
何となく、薄っすらと分かるのは、何でも屋の中でも特に身体能力の高さが求められる親分《ボス》のメンバーには、走れない自分が戻る事は、もう出来ないという事。


「……これを、貴方に渡してほしいと頼まれました」

石像のように固まっている私に、医師は最後に一通の手紙を差し出してきた。
封筒に書かれた「ギャランへ」という文字、それは間違えるはずもない親分《ボス》の字。
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