夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

ーーヴァロン?

見上げる視線の先の男性が放つ雰囲気に、私の鼓動がトクンッと大きく跳ね上がるのを感じた。

だってその人は少し前のマオさんではなく、以前のマオさん。夢の配達人だったヴァロンが長期任務に行った際に変装していた頃のマオさんに、近かったから……。
髪と瞳は灰色で、見た目で変わった部分と言えば顔を隠すように長かった前髪が少し短くなっていて、伊達眼鏡を外しているだけなのに……。
それだけ、なのに……。最後に別れた際とのあまりの雰囲気の違いに、"あの時のマオさん"が消えてしまったように感じた。


「すみません、仕事が長引いて遅くなってしまいました」

ーーこの男性は、誰?
オドオドする事なく、落ち着いて話す人物を目の前にして私は心の中で問い掛ける。

「何処かお店に入りましょうか?
……あ。でももうこんな時間だし、今日はイブだから満席かな……」

ビシッと決めた黒いスーツに、ヴァロンが好きだった深緑色のネクタイを締めて、濃い茶色のトレンチコートを羽織って、身に付けた高そうな腕時計を見ながらそう言う彼を、私は……初めて見た。
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