いじわるな藍川くんの愛が足りない
今は7月中旬でーー彼をはじめて見たのは、 3か月前の4月中旬。
入学してまもないのころ、それまで2両目に乗っていたのに、なんとなく3両目に座ったとき、向かいに彼が座っていたのだ。
好きになった理由は、いわゆる一目惚れ。
見た瞬間に奪われたわたしのハート。
背が高くて、知的で端麗な顔つき。サラサラな黒髪。
ドストライクだった。
それから毎日、わたしより何駅先に乗っているのかはわからないけど、眠っている彼の寝顔をつりかんに捕まって立って、こっそり眺めるのが、わたしの日課。
彼は隣町に向かう方面への電車に乗り換えるため、わたしより3駅ほどはやく電車を降りる。
わたしと彼が共に電車に乗っているのは、6駅分。
時間にして、約15分。
その15分がわたしの毎日の癒し。
彼の寝顔は最高に綺麗なんだ。
だけどあまり見ていたらおかしな人だから、気づかれないようにはしてる。
むしろ、寝ているときにしか見れないんだけどね。
運のいいことに、今日は彼の向かいの席が空いている。
心のなかは音符が飛びながら、そっと座る。
真ん前に、彼がいる。
ガタンゴトンと電車が揺れるたびに、彼の肩も小さく左右に揺れる。
たまに頭をコキッてしたり。
そんな小さな仕草さえ、きゅんとしてしまう。
ああ、今日もかっこいいなあ...。
そんなふうにエネルギーチャージをして、わたしは今日も一日がんばるのであった。