いじわるな藍川くんの愛が足りない
「ここが、図書室」
「ここが、生徒会室」
「ここが...」
「あのさ」
学校案内というのは、どこの教室がどこにあるかが分かればいいはずだ。
そもそもほんとうに案内なんて必要なのだろうか。
だって、まず体育館の場所はわかるだろうし、
理科室やパソコン室など授業で移動しなければならない教室は、その都度みんなに着いていったらいいじゃないか。
もし一人で行かなければならない瞬間があったら、そのとき聞けばいいじゃないか。
わたしはべつに、学校案内がめんどくさいとかそういうことじゃない。
もし転校生が来たとして、わたしが頼まれたら、快く引き受ける。
転校してきたばっかりで不安だろうから、困ったことがあったら力にだってなろうと思うだろう。
...だけど、“今回の転校生”だと、はなしは別だ。
同じクラスになってしまったものはもうしょうがないけれど、できれば関わりたくない。
だって、“一番嫌いなんだよね”なんて言い方をしてフッてきた相手だ。
しかも、彼女がいるんだから、余計に。
そんなの関係ない!好きでいる!なんて思えるわけないじゃないか。
藍川くんは、案内してあげているわたしの言葉を遮ってきた。