いじわるな藍川くんの愛が足りない


「きゃ~!!

藍川くんめっちゃ歌うま~!!」


委員会が終わり、わたしはまっすぐ家に帰る予定だった。


......それなのに。


どうしてわたしはココにいるんでしょう。

そう、カラオケボックスに。


「あ。アンタもカラオケ来んの?」


理科室を出ようとしたときに言われた言葉。


「っ...行くわけない!」

...ああ言ったのに。


正門から出ようとしたら、スマホがブルブルと震えた。


「もしもし?」


『もしもし詩織?』


電話をかけてきたのは舞だ。


「どうしたの?」


『詩織、委員会終わった?』


「今終わったよ」


『今日クラスの10人くらいでカラオケ行くの知ってる?』


「あー...」


今日後ろで話してたやつか。


『詩織も行かない?というか、来てほしい!!』


「えええ?」


『実は、松本くんも来るらしいんだよね!』


松本くんとは舞の片想いの相手だ。


「うーん...」


カラオケは好きだし、行きたいは行きたいけど...、

やっぱり引っ掛かるのは、“彼”がいること。


『ねえ詩織、お願い~。

詩織歌上手いからいいじゃん!

それに、赤木くんも来るらしいよ!?』


赤木くんとは、わたしが入学当初気になっていた相手。


その気持ちは、今となっては悔しいことに藍川くんが現れたから消えていったわけだけど。

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