冷たい指切り  ~窓越しの思い~
仕事を頑張ることは…………良いことだ。

ただし、…………子育てをちゃんとしてからだ。

義務教育の子供を、両親不在で姉に全てを任せるのは………アウトだろう。

そう言えば、彼女もだけど………姉は??

自分を犠牲にできる姉が不思議で……………

「ねぇ~、伊藤さん。
姉ちゃんは………不満を言ったり、不信を持ったり……してないの?
部活を辞めて、毎日帰らない家族を待ってるんでしょう??」

「はい。
姉は、前にお話したように………
びっくりする程純粋で、人を疑うなんて……ないんです。
目の前でエッチしてても『浮気』なんて……思わないかも!
そんな人だから、私が勝手をしても………
笑顔で………好物を作って待っててくれるんです。
絶対の愛情が……嬉しいし、安心なんだけど…………
敵わない!って思いも生まれて………苦しくなるんです。
私にとっては、母親のような人だから………守りたくて………
両親のことが言えないんです。
大切なのに…………みんなの愛情が羨ましくて…………
汚したくなるけど……本当は守りたくて………。
自分の気持ちなのに、分からないことばかりでイライラして………。」

そう話す彼女の顔は………苦しくて悲しそうだ。

「今だけね。
セクハラって、訴えちゃあダメだよ。」と笑って

「おいで。」と自分の横を指した。

一瞬戸惑ったものの、スッと立ち上がると………俺のソファーに腰を下ろす。

さっきした、子供にするような『ヨシヨシ』という撫で方とは違い

もう少し大人にするような……

愛しい彼女に優しく触れるように……撫でると

コテっと…………肩に頭を預けた。

安心させるための行為だったはずなのに……

なぜだか俺が………安心をもらうことになった。

この安心には…………多分、名前がついている。

ただ…………それに気づいてしまうと………

もう、今のように………彼女を守れなくなる。

俺は、慌てて教師の仮面を用意して………その答えにふたをした。
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