残念系お嬢様の日常
「う、うん。それからは僕の書いた話にアドバイスをくれたり、本の話をノートを通してしただけなんだ。だからその、部長については正直ほとんど知らなくて……」
「蒼を文芸部に入れろと言ったのは部長なんでしょう?」
「そ、そうだけど……」
文芸部の部長の正体を誰も知らないって件は少し興味があるけれど、その件で海老原くんが知ることはすべて聞き出した。今回の私の目的は別だ。
「海老原くんは、中等部に妹さんがいらしたわよね」
「え? う、うん。いるけど……」
全く似ていなかったらから気づかなかったけれど、雨宮にあの子たちのフルネームを聞いてみたら〝海老原〟って子がいて驚いたわ。
「妹さんに最近変わった様子はないかしら」
「え、ちょ、どういうこと? 妹になにかあったの?」
「ああ、もしかしてご存じないのかしら」
今の私、最高に悪役っぽい。
口角を上げて、見下すように目を細めると海老原くんが息を飲むのがわかった。
まるで蛇に睨まれた蛙だ。そんなに怯えなくても。