残念系お嬢様の日常

ヒーロー

※水谷川スミレ視点

***



今もどこかで自分を見張っている人がいるのかと思うと怖くて、周囲を警戒しながらクラスの子達に混ざって更衣室を出た。

体育の授業が終わり、教室へ戻るこの瞬間も盗撮犯はシャッターチャンスをうかがっているかもしれない。


昨日、真莉亜と瞳に全て話した。

真莉亜は絶対に犯人を捕まえてみせると意気込んでいたけれど、大丈夫かしら。

瞳も「空回りしないか心配」と言っていたし、桐生景人と流音様も真莉亜の暴走を危惧していた。


クラスの女の子たちと一緒に渡り廊下を歩いていると、すれ違う男子生徒から「あ、水谷川さんだ」と私のことを話している声が聞こえてくる。



「人形みたいだよなぁ。あの髪の色本物かな」

「俺今、目合った! やっぱちょーかわいい」

「でもさー、ほとんど喋らねぇし。いつも王子と女王と一緒だもんな」

せめて聞こえない距離で会話をしてほしい。

昔から髪のことはよく言われたし、男の人の前で口数が少ないのは兄たちのせいってだけではない。幼い頃に嫌な経験をしてきたからだ。






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