ひまわり男子とシンデレラ



小さくなる音と同時に私を掴んでいた手は力なく垂れ下がり私は自由になったが、体は小刻みに震え上手く歩くことができなかった。


一歩、また一歩とベッドへ近づくと、そこには血の気を失った肌といくつものチューブに繋がれた彼の姿。


注射針が刺さったままの腕に触れると、熱を無くした腕はひんやりしていた。



私はただただ泣き叫んだ。



頬を触れても、体を揺すっても、なんど呼び掛けても、柔らかく閉じられた瞼が開いてくれることはなかった。



あの日どれだけ泣いたのだろう。
いくら涙を流しても、流しても胸の苦しさが和らぐことはなかった。



涙と一緒にこの苦しみも流れ出てしまえばいいのに・・・。



涙が枯れた頃にはカスカスの声と心にぽっかり穴が開いたような喪失感だけが私の中に残った。



彼が亡くなった二日後、彼の母親が私の家に小さな箱を持ってやってきた。



「これ、息子が・・・奈々ちゃんに渡そうとしていたものなの。・・・受け取ってあげて」



差し出された箱には“ハッピーバースデー”の文字。
枯れたはずの涙は不思議とまたこぼれ出た。
私は震える手で彼からの最後の誕生日プレゼントを受け取った。
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