3年経ってしまった、消せない話
私の住む村にやってきた旅人が宿代代わりに、って置いていった話。


「七色の妖精を見つけたら、どんな願いでも叶えてくれる。

自分も自由という願いを叶えてくれた」


どこか現実味がない話。私だって信じてはいなかった。

私以前に誰も信じる人はいなかった。ただ信じたのは宿屋の主人くらいだろう。

夢見がちな宿屋の主人はその話しを信じてその旅人を泊めた。人がよすぎる。

その旅人はいくつもの現実味のない話をいくつも残して村を後にした。

雪男に出会ったとか、天使と遭遇した時

あの世に連れて行かれそうになったとか…そんな話。

それから何年経ったのか。双子の兄が病に倒れた。

治す方法は見つからないらしい。いわゆる不治の病という奴だ。

そう、私は唯一の家族である兄を近い将来に失う事になってしまうのだ。

もう治らないと知った時には私は大粒の涙を流したのだろう。

どうしても兄を助けたい。ずっと我侭かもしれないけれど、私の傍にいて欲しい。

村では治せないのなら、他の村や町に行けば治せる方法が見つかるかもしれない。

だから私は兄を信頼の出来るおばさんに看病を頼み、1週間の旅に出た。
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