常盤の娘
「いえいえ。純花さんは人気者でしたし、僕のことを覚えていなくても仕方のないことです。しかし、」

東条はそこで言葉を切り、流し目で純花を見やった。

「僕が高校時代に生徒会長を務めた一年間、純花さんはずっと副会長として補佐してくれたはずなのですが、忘れられてしまったというのはやはり悲しいですね」

ピシリ。純花は十八畳の広い和室の空気が一瞬にして凍る音を聞いた。いくばくかの沈黙。その末に、ゴスッ。母の必殺裏拳が、純花の正座でしびれきった足裏に落とされた。(純花、なに失礼なことぬかしてんのよ!)
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