常盤の娘
苦労の末、入学したのにもかかわらず、純花の目は虚ろだった。純花が脇目もふらずに追いかけてきた兄は高校生で死んだ。兄と同じ場所に立った今、明確な目標であったはずの兄が靄に翳めた。私は兄さんの人生を生きると決めたけれど、兄さんはこの先どのように生きるつもりだったのだろう。兄の葬式からついてこない心を引きずって、無理に進めてきた足が止まった。進むべき方向が見えず、躊躇っていた。

でも。やっと今、ひとまずの目標が見えた。純花は晴れ晴れしい気持ちで、もう一度席次表のてっぺんを見上げた。

1東条慎也 A組20番 1100点

ほら。完全無欠にはまだ102点も足りない。
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