極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 広報の仕事は未経験。先輩社員や同僚から業務を習って覚えなくてはいけないし、新しい環境に馴染むための努力も必要だ。
 それなら、今のまま職場を変えず、キャリアを磨くのも、ひとつの選択肢ではある。
 だけど、このグループにいる社員なら、親会社への異動は喜ばしいことで、断る人はほとんどいないと言っても過言ではない。せっかくのチャンスを自ら手放すのも勿体ないと思う。

(キャリアか……)

 万佑は、環をふと思い出した。
 若くして一流コンサルティング会社の経営に携わる辣腕な彼も、こういう経験はしているだろう。

 先週、突然告白されて以来、それまでと変わらずに連絡を取り合っている。
 思った以上にあっさりとした態度の彼は、告白の返事を求めてくる素振りもない。
 次に会う約束もまだしていないし、おそらく彼も多忙なのだろう。
 ブルーメゾンで働くことになれば、しばらくはプライベートも返上する気持ちで仕事に邁進しなくてはならなくなりそうだ。

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