はつ恋の君をさがしてる
高嶺:じゃぁまず既往症!
鈴加:既往症?それって今までにした病気やケガについてですか?
高嶺:あぁ。いちを医者として一緒に暮らすんだし聞いておきたいからな。

これはウソじゃなく本当だ。
あの日見た左腕の傷痕についても興味があった。

鈴加はしばらく黙って考えたあとでゆっくり話してくれた。

鈴加:えっと持病はこれと言って無いと思います。貧血は昨年の職場の健康診断で指摘されたけど……別にすぐ受診しろとまでは言われなかったし……
高嶺:本当に?こないだの血液検査の数値は一桁だったぞ?俺的には鉄剤処方レベルだけど?まぁいい。ケガは?お前左腕にわりとでかい傷痕があるよな?

俺はできるだけさらっと聞いてみた。
鈴加はちょっと言いよどんだのか何度か口を開け閉めしたあとでやっと話始める。

鈴加:何で知ってるんですか?いつ見たんですか?まぁ良いんですけど……あの傷は子どもの頃にちょっとケガして……

そこまで言って止まってしまった。
もっと詳しく知りたくてそう促すと渋々続きを話してくれた。

鈴加:たぶん4才位に祖父母の家に遊びに行って近くの神社で石灯籠の下敷きになったらしくて……腕の骨を折って……知らない病院に両親に置いていかれたんです……。

高嶺:置いていかれた?それはどう言う意味だ?

鈴加:あの……入院しただけなんですけど、両親は仕事があって急には休めなかったし、祖父母の近くに大きな病院がなかったからその病院に運ばれたのは仕方ないんですけど……。私まだ小さかったし、初めてひとりにされてすごく不安で……置いていかれたって思って……。ずっと泣いてたんです。それが、担当の先生の気に障ったみたいで……意地悪された訳じゃないと思うんですけど、なんか……みんな冷たい対応で……私。精神的におかしくなっちゃったみたいで、2週間後に祖父母がやっとお見舞いに来てくれたときに痩せて別人みたいになってて泣きわめいてベッドに縛られていたらしいんです。

言い辛そうにそこまで一気に話した鈴加が大きく息を吐いた。
俺はそっと鈴加の肩に腕を回して抱き寄せる。
辛そうなのは分かるが最後まで聞きたくてじっと待った。
鈴加は再び話を始めてくれた。

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