初恋の君と、最後の恋を。
呼び掛けても先輩はタオルから顔を上げなかった。
「…黒瀬先輩にバトンを繋いだら、話そうと思ってました。こんなかたちになってしまったけれど、私が出した答えをお伝えしても良いですか?」
「……」
返事の代わりに、最終種目である借り物競争が始まるアナウンスが流れた。
「私、」
ふぅと、息を吐く。
「黒瀬先輩が好きです」
仁くんの顔が浮かぶ。
それでも、
「婚約を解消します」
身勝手でごめんね。
「どれだけ頑張っても、黒瀬先輩を忘れることなんてできないから。だから仁くんとはお別れします」
決めた。
もう迷わない。