ワケありヤクザと鈍感少女
・・・ん?今なんて?
鈴木組に…?私が・・・?
ついて・・・こい?
「えぇぇぇぇぇ!?
な、なんでですか!?」
「・・・うるせぇー。
だって、俺のこと怖くねぇーんだろ?」
頭を抱える響也さんに構わず私は続ける。
「・・・それは否定しませんけど。
・・・あの、鈴木組に来いとはどういうことですか?」
「・・・そのまんまの意味。
お前は俺の命の恩人なんだ。礼くらいさせろ。
そろそろ迎えもくるころだしな。」
「む、迎えって?あの、私まだ返事・・・
もしかして、タクシーでも呼んだんですか?」
「・・・ははっ。タクシーなんか乗れねーよ。
わりい、ちょっと電話。」
と言うと彼はスマホを持ち、部屋から出ていく。
彼はまた、ニコニコと笑った。
ヤクザらしくない優しい笑顔。
そんな笑顔を不覚にも
私はかわいい と思ってしまった。
数分後
電話を終え、部屋に戻ってきた彼に私は話す。
「・・・たしか鈴木組って」
日本のヤクザ界の1位2位を争うほどの鈴木組は、
喧嘩の強さはもちろん、組の人間は少なくとも
1000人以上はいるという。
・・・鈴木組の組長は特に暴力的で、最凶
さらに、とんでもなく極悪。
人の心を持ってない、という噂まで流れている。
でも私は、彼がとても人の心を持ってないとは
思えなかった。
「・・・あなたは、鈴木組・組長の鈴木響也。」
「・・・そうだ。
その事実を知ってもお前は俺のこと」
彼は少しだけ悲しそうな顔で聞いてきた。
「怖く…ないです。
だからそんな…
悲しそうな顔しないでください。」
どこか儚げな表情をする彼を見た私の胸はすごく締め付けられた。
「・・・私は、あなたの」
そこで私は言葉をとめた。
「やっぱりなんでもないです。」