ワケありヤクザと鈍感少女
すると、彼は私の手をそっと握りしめる。

「・・・組以外の人間で俺を怖くないって言ってくれた奴お前くらいだよ。沙綾。」

少しはにかみながら彼は今までのことを

私に話してくれた。

鈴木組・組長という肩書きで、

どれほどの苦労をしてきたかは私には到底測りきれない事だと思う。

みんなに恐れられ、冷たい目線を送られながら生活しているらしい。



「・・・そうだったんですね。

こんなによく笑う人なのにね!ふふっ。」

思わず笑みがこぼれた私を

彼はじっと見つめてくる。

あ、調子乗った。

「・・・ごめんなさい。言いすぎました。」

私はすぐにぺこりと謝る。

「・・・謝るな、沙綾。


お前、俺のこといい加減さんづけやめろ。」


「いや、でもさすがに呼び捨ては・・・」

色々、問題になりそうだし・・・。

「・・・じゃあ、1回だけ呼んでみ?

響也 って。」

私は覚悟を決めて、名前を呼ぶ。

「・・・キョウヤ。」

緊張してカタコトになってしまった。

それを聞いて彼はまた、笑い出す。

「・・・今度からそう呼べよ。

あと、敬語もなしだ。」

「・・・で、でも」

「これは鈴木組・組長の俺からの命令だ。」

何も言い返せない。圧がすごすぎる。

もう、拒否権ないじゃん・・・。

「・・・わ、わかったよ!響也・・・さん!」

やっぱ呼び捨ては無理!

と、目で訴えると彼はニコニコしながら、

「・・・しゃーねー。

さん付けは見逃してやる。」

と言うと、彼の大きな手が私の髪をくしゃくしゃと撫でる。
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