伝説に散った龍Ⅰ
――玄関の目の前にある、異様に幅の広い階段。
もう最上級生だというのに
朝から汗水たらして、階段を一段一段上がっていく私は
心の中で悪態をつきながら、それでもどこか軽い足取りで。
その奇行の理由は、
この階段を登り切った先にある。
ついでに
不良なんてやっている私が、二年連続で皆勤賞を取っている理由も。
「――芹那ちゃんっ‼」
やっとのことで階段を上り、
息を切らしながら教室に足を踏み入れれば
そんな私の胸に、小動物が飛び込んできて
私はそれを苦笑しながら抱き留めた。
「おはよう‼」
「おはよ」
「芹那ちゃん前髪切った!?」
「半年前から切ってない。適当に言ってんでしょあんた」
「わははは」
男たちのがなり声だとか、女たちの猫なで声だとか、そんなものは一切耳に入らない。
伊織のせいで私の世界からはクラスメイトが消える。
――この一瞬、私は伊織から目が離せない。
いや多分、霊長類なら何でも誰でもそうなる。