伝説に散った龍Ⅰ





ごめん、世那。
ごめん
ーー私。



自分まで裏切って、世那には当然のごとく不安な思いさせて。



自分がとてつもなく情けない。



でもまだ、言えないんだ。
ーーのことは。



知ったら、みんながきっと、私から離れていくだろうから。



独りには、もうなれない。



伊織の、黒龍の、
優しさに、触れてしまった今は。



もう後戻りは、できない。



「でね、世那。
…一緒に、暮らさない?」



私の頭の中に渦巻く全ての感情は、一時の時の流れに任せよう。



今この瞬間だけ、私はそう思うことにした。



「私は、一緒に居られなかった時間を、穴埋め出来たらな、って思う。



世那がわたしといっしょにいることで、嫌な思いをするリスクがあるのも承知。



そんなことがあったら、その時は金輪際近づかないって約束する。
だけど、」



ーーたったひとり、この世に生きてる肉親だもん。
一緒にいたい。



< 69 / 113 >

この作品をシェア

pagetop