愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
その声に気付いた女の子のお母さんが、二人で一緒に近付いてくる。
「こちらが娘さんを助けてくれた、櫻井さん」
警察官に紹介され、なぜか身体がピシっと伸びた。
「このたびは、娘がご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
そう言い、女の子のお母さんが深く頭を下げた。
「いえっ…全然…」
戸惑い、頭を上げるように促す。
「ほら、結芽(ゆめ)もお礼を言いなさい!!」
お母さんの隣にいる女の子を見ると、踏切の時と変わっていない目。
…やっぱりー…
「聞いているの!!??お礼を言いなさいって言ってるじゃない!!」
パチン!!!
「!?」
目の前で女の子がお母さんに頬を引っ叩かれた。
驚いて、言葉が出ない。
「お母さん、ちょっと落ち着いてください」
警察官が慌てて、女の子をお母さんを離す。
「あんたは何で言ったことが出来ないの!?」
「お母さん!ちょっと離れましょうか」
「聞いているの!?」
警察官に連れられ、女の子のお母さんは離れて行った。
残されたのは、圭吾くんと私と結芽ちゃんという女の子。