俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。



「母さんには言ったことねぇけどな
俺は歌手より役者の方が得な気がするぞ」

「いや、得って。なんだそれ」

「だって役者はいろんな人になれるだろ。
歌手って歌手でしかいられないけど、役者は演技でもいろんな人になれるだろ。
高校生にも、教師にも、戦国武将にもな。

だから俺はお得だと思ってる」


いろんな人になれる、か



「まぁ価値観は人それぞれだけどな。
母さんなのて自分のペースで曲作って、ライブして、それはそれで楽しそうだし。
昔は事務所に強制されてる部分が大半だったけど、それでもライブは本当に楽しそうにやってたし。

俺も、舞台で多くの拍手貰うとすっげぇ気持ちいいからちょっと気持ちわかるけどな」

「…へぇー」

「碧翔にもわかるよ。
もっと真剣に役になりきれば。
うまくいけば自分の自信につながるし、自分に自信がつけば好きな子にも堂々とアピールできるぞ?」

「は!?」

「いるんだろ?好きな子。飛鳥から聞いた話だけど」


なっ…、あいつ!どんなこと言ってんだよ!
どんな話してんだよ!ったく!!

…まさか、兄貴には言ってないよな?
兄貴に涼すけのこと好きなんてバレたらまじで惨めだわ…


< 57 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop