暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
詩side

北星の島田さんが学校に現れてから

1週間が経ち、ついに星竜の元に

1通のメールが届いたのは

いつものように下っ端のみんなと

鬼ごっこやゲームをして遊び疲れ

幹部室でひと息ついていた時だった

パソコンの画面に釘付けになっている

奏から、その内容が伝えられた

「明日の夜19時にここへ来るみたいだよ。
それから…」

言葉を突然切った奏は私に視線を移してから

北斗に視線を移し、爆弾を落っことした

「北星が勝ったときは…
詩ちゃんをいただく、だそうだよ」

…………へ?

私をいただく!?

私、食べられちゃうの!?

絶対嫌だぁ〜!!!

拒絶の意を込めて頭をフルフル振った

そんな私を落ち着かせてくれたのは北斗

「俺達は絶対に負けねぇから安心しろ。
それに…詩は俺らの大切な姫だ。
簡単に手放したりなんかしねぇよ」

星竜がどれだけ強いのか、私は知らない

だけど、不思議と北斗の言葉は

私を安心させてくれるし

信じられるんだよ

それに、他のみんなだって沢山

訓練頑張ってたのを私は知ってるもん

だから私はみんなを、星竜を信じる!

≪私、みんなを信じてる!
この1週間、みんなが沢山訓練して
頑張ってきてたの知ってるもん!
本当は怪我なんてして欲しくないけど
避けて通れない道だって分かってるから
私は私の出来る事でみんなを守るから≫

笑顔でノートを見せると

北斗達に笑顔が溢れて

私もまた笑顔を返した

「姫にこれだけ応援されたら
頑張るしかないよね」

「おうよ!絶対負けねぇ!
詩は俺らの大切な姫だからな!」

「そうだよ〜!僕たちには
強〜い味方の詩ちゃんがいるもん!
絶対勝つからね!」

「…負けない」

奏、錬、奈留、冬の言葉に

胸が震えた

目の奥が熱くて溢れそうになる涙を

頑張って抑え、笑顔で頷く

北斗に抱き抱えて貰いながら

幹部室を出た私達は明日に備えて

1階に溜まるみんなの元へと降りた

ざわざわしていたのがピタリと止んで

総長である北斗の言葉を待つ

シーンッとする倉庫に北斗の

低く落ち着いた声が響いた

「明日の19時、北星との抗争が始まる。
この1週間、訓練してきたことを
存分に発揮しろ。
それから、向こうからふざけた
メールが届いた。
北星が勝ったときは…詩をいただくと。
だが、俺達は絶対負けねぇ。
明日はそんなふざけたメールを寄越したことを後悔させるぞ!

明日に備えてしっかり身体休めとけよ。
以上だ、解散!」

「「「うおおおおお!!!!」」」

北斗の言葉で星竜のみんなが更に

ひとつになって気がした

いつものように倉庫に寝泊まりするみんなに

食事を用意して楽しく過ごした

明日には抗争が始まるのに

倉庫内は笑顔で溢れてて温かい

それだけで私の不安は心から消えたんだ!

明日の抗争が終わったら

またこうして笑顔で過ごしたいな!

片付けを凛くん達と終えてから

私は明日に備えて準備した

沢山の救護セットを1階の備品室に

置いて、これをなるべく使うことが

ないように祈りながら

北斗の居る総長室へと向かった

ーコンコン

ノックしてから扉を開けると

ベットのヘッドボードに背を預け

雑誌を読んでいた北斗に近付いた

私に気が付いた北斗においで、と呼ばれ

大きなベットによじ登る

ベットの上で胡座をかいた北斗は

膝の上に乗せて私をギュッと抱きしめた

「明日は詩にとって怖い思いをする
出来事が目の前で起こる。
俺達も無傷では済まないが、それでも
必ず勝つから…
笑顔で迎えてくれな」

北斗の胸から鳴る音に耳を傾けて

私は頷いた

腕を緩めた北斗の優しい眼差しに

見つめられてドキッとした

あれ?

いつもの見慣れた光景なのに

心臓がトクトクと早鐘を打って

身体中が熱くて、なんだか変だよ…

私、どうしちゃったんだろ?

首を傾げて考える私のおでこに

一瞬、柔らかいものが触れた

それが北斗の唇だと分かるのに

数秒かかった

え?今の、なに?

おでこを押さえて

真っ赤になっているであろう私の

顔を見て北斗は意地悪な笑みを浮かべ

「顔、真っ赤だぞ」

と、ニヤついた

もうっ!なんて事するの!

怒りながらポカポカと北斗の胸を

叩きながらも不思議と嫌じゃなかったことに

驚きながら、恥ずかしくて

私はプイッと顔を逸らせて膝から降りて

布団を頭から被った

鳴り止まない心臓の音を感じながら

私はそのまま深い眠りについた









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