暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
北斗side

俺の頭の中は、出逢った頃から

いつも眩しい笑顔を放つ詩で溢れている

あの笑顔の下に、こんな過去があったなんて

予想を遥かに上回っていた

確かに穂花と同じような境遇ではあるが

それとは比べ物にならない程

残酷で悲しい過去だ

こんなもんは比べるもんじゃねぇけど……

受け止める覚悟か……

そんなもん、詩と出逢った時から

傍に置きたいと願って、好きになった時から

出来てる

けど、それは“出来てるつもり”だったのかもな…

詩の過去を知らなかったとはいえ

他の女に目を向けていたのは事実だ

俺からすれば、幼馴染とのいつものやり取りだが

何も知らない詩にしてみれば

過去のダチと同じような事をしているように

見えたろうし、聞こえたはずだもんな

例えどんな理由があるとしても

初めて好きになった女を泣かせて傷付けた

それはまごう事なき事実だ

1度失った信頼と気持ちを取り戻すのは

簡単じゃないが、諦めて離れるなんて事は

1ミリも考えてない

傷付けたのが俺なら、それを塞ぐのも俺だ

もう1度この手に詩を取り戻す

ちゃんと説明して誤解を解いて

詩の気持ちを聞いて、この手に抱きしめたい

詩……泣かせて傷付けて、ごめんな

今度は絶対に泣かせはしねぇから

「今回は迷惑かけて申し訳無かった。
俺にとっては穂花は幼馴染であり妹みたいな奴で
親父さんとのことがある時に使う言葉で
助けた気でいたけど……
それが根本的な解決にはならねぇって事が
詩の過去を聞いて分かった。
詩がそうだったように、穂花も自分から
変えようと意識させなきゃいけないことなのに
昔からの言葉で何とかしようとした。
考えが浅はかで、何の解決にもならないって
よく理解出来た。
そのせいで詩を泣かせて傷付けたこと……
反省してます。

俺にとっての唯一の存在で守るべきヤツは
今までもこれからもずっと変わらず、詩、ただ1人。
どれだけの時間がかかっても
2度と離さないように守っていく。
詩の過去を聞いて改めて思えた。

詩が大切に想う人になりてぇと思ってる。
詩と2人で話したい」

俺の話に此処に居る奴等は皆一様に

大切な詩を傷付けたんだ、当たり前だろうがって

顔して呆れた表情と視線を向けてきた

それでも俺の決意も気持ちも変わりはしない

詩が話すことを許してくれるなら

俺の決意と覚悟を持って向き合いたい

俺の話を聞いた涼風さんが話し出した

「北斗の気持ちは分かったわ。
詩ちゃんが話し合いに応じたなら
その時は2人でゆっくり話せるように
この家を貸してあげる。
もちろん、その時は私達は席を外すから。

だけど……

その前にまずは穂花の事を解決すべきよ。
あの子が自作自演までした経緯とうべきか
一体何がしたかったのかをね。
北斗と2人にしたりなんかしたら
また話がややこしくなるんだから
今此処に連れて来なさいよ。
ちょうど心理学の先生もいるしね〜、絵留?」

「そだね〜!
北斗くんとあの子を絶対に2人になんかさせな〜い!
今は詳しく言わないけど、あの子が来たら……

ふふふ〜!!化けの皮、剥ぐからね〜!!

私の大切な天使を傷付けたことを
たっぷり後悔させてやるんだから!!

って事で!
早く連れてらっしゃ〜い!!」

涼風さんも絵留さんもニコニコしてるけど

目が笑ってねぇよ

詩と同じ女なのかと疑いたくなるな

けど、穂花との事を解決出来たら

詩と話せるんなら、とっとと解決してぇ!

傍らに座る奏に視線を送ると

やれやれといった感じで立ち上がった

「じゃあ僕が迎えに行ってくるよ。
連れ帰って来るまでには
このピリピリした雰囲気、どうにかしておいてね?
流石に素人の穂花でも、この空気は読めるから。
まぁ、その辺は姉さん達に頼むよ。

じゃあ、行ってくるね」

空気を読むことに長けている奏が言うんだから

そりゃそうかと納得しちまうな

なんせ現役の俺らよりも

目の前の3人から来る笑顔の威圧感が半端ねぇ…

それに絵留さんが放った言葉が気になる

“自作自演”

穂花を指して言ってるみてぇだし

それに化けの皮を剥ぐとか物騒な言葉も

出てきたしな

俺には穂花の真意がまだ見えねぇけど

この3人には見えてるんだろうな……

それがどんな真意かは俺には今は分かんねぇけど

詩と向き合う為に必要であるなら

どんな事だろうと解決してみせる
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