Smile  Again  〜本当の気持ち〜
聡志が野球を始めたのは、小学校4年の時。選手経験もないのに、野球好きを買われ、近所の野球チームでコーチの真似事をしていた私のお父さんが誘ったんだ。


自分から積極的にという感じではなかったけど、チームに加わった聡志は、たちまち頭角を現し、5年生になるとエースになった。


私はそんな聡志の姿を見るのが好きだった。


確かに私は野球を見るのが、大好きだったし、お父さんの手伝いをする為みたいな顔して、よく練習や試合に行ってたけど、本当は聡志を見たかったから、聡志を応援に行ってたんだ。


そう、私の知ってる聡志はピッチャーだったんだ。カッコよかったんだよ、いつも心の中でそう思ってた。マウンドの上の聡志は、明るくて、チ-ムの中心で、三振取るとガッツポ-ズなんか決めちゃって、小学生のくせにって監督によく怒られてた。


でもそんな時でも聡志は、悪びれることもなく、ペロリと舌を出して、やり過ごしていた。


そんな聡志が、あの日、キャッチャ-ミットを持って、キャッチャ-マスクを付けて現れたのは、本当に衝撃的だった。キャッチャ-の聡志なんか見たくない、私が野球部入りを断念する決定打になったのは、その思いだった。


ねぇ聡志、仙台での3年間で、君に何があったの?


お母さん同士の交流が復活して、少しずついろんなことがわかって来たけど、聡志のことは、ほとんどわからない。


聡志、やっぱり君は、私にはもう何にも話してくれないの?私には、それを君に聞くことも許されないのかな・・・?


もうすぐ夏の予選が始まる。私、松本先輩を応援する為だけに、スタンドに行くんじゃないんだけどな・・・。
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