Smile  Again  〜本当の気持ち〜
海外遠征から、ツートップが帰って来て、グラウンドに活気が戻って来た。どこから湧いて出たのか、大勢の女子が、また黄色い声を上げながら、ツートップに熱い視線を送っている。


その中に由夏もいる。相棒の水木の横で、相変わらず熱心に松本さんの一挙手一投足を見つめている。こっちがあいつを見たって、視線が合った試しがない。


松本さんに、あんな素敵な彼女がいることを知っていながら、何してんだと思うが、それは所詮負け犬の遠吠え、醜い嫉妬という奴なんだろう。


だいたい、あれだけ突き放したことを言っておきながら、たまには俺を見てくれなんて、思う方が、図々しい。


なんてことばかり、考えてる場合じゃない。秋季大会はもう目前。県大会、そして、勝ち進めば、その先の関東大会。来年春の甲子園出場をかけた、約2ヶ月に渡る戦いが始まる。


投打の両輪を遠征で欠いていたから、俺達新チームはまだ、手探り状態。下馬評では、3年生の抜けた明協はチーム力が落ちている。特にチームの要であるキャッチャーが1年生というのは、大きな不安要素だと言われている。


お説、ごもっともだとは思う反面、この野郎という気持ちは当然ある。


まだ正式に言われたわけじゃないが、どうやら監督は俺を先発で使ってくれるようだ。俺はまだ白鳥さんの球を数えるくらいしか、受けたことがない。バッテリーって言うのは、夫婦に例えられる程の息の合ったコンビネーションを求められるポジション。


これから、信頼関係を築いていかないとな。
< 31 / 217 >

この作品をシェア

pagetop