Smile  Again  〜本当の気持ち〜
最後の打者が放ったサードゴロを軽く捌いたキャプテンが、ファーストの久保先輩に矢のような送球を送り、ゲームセット。


「よし。」


マウンドで、沖田が思わず声を出す。7回コールド勝ち。


(由夏、勝ったぜ。)


心の中で、そう呼びかけながら、俺は沖田に駆け寄った。


まずは順調なスタート、沖田は落ち着いて、7回を投げ抜いたし、俺も無難にリード出来たんじゃないかな?だけど、手放しでは喜べない。


こんなことを言っちゃなんだが、今日の相手なら、5回コールドで一蹴しなきゃならなかったはず。だけどそれが出来なかったのは、守備の乱れと打線の低調。


ショートに入った同期の神は手痛いエラーを連発、打線も5番の佐藤さんまでの上位打線と、それ以降の連中の力の差があまりにも歴然。これは打撃には昔から、からっきし自信のない8番打者の俺の責任もあるんだが。


つけ入る隙あり、ライバル高校は、ほくそえんでるんじゃないかな?


それにしても、ゲームセットと同時に由夏に思わず呼びかけてる俺って・・・。自分の気持ちに素直になれなくて、松本先輩に心奪われてるあいつを見るのがつらくて、逃げ回ってるただのヘタレじゃん・・・。
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