Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「ねぇ、由夏・・・。」


「うん・・・。」


不安そうにこちらを見る悠に、私も曖昧にうなづくしかない。目の前に繰り広げられてる戦いは、とても王者と言われる我が校のそれには見えなかった。


3回戦、この日は土曜日で、私達は大挙、野球部の応援に駆け付けたのだが、目の当たりにしたのは、失礼ながら格下としか思えない相手に苦戦する姿だった。


満を持して、先発マウンドに立ったはずの白鳥先輩が、相手打線に試合開始早々につかまり、ピンチを迎える。どうも先輩と聡志の息が合ってないように見え、それに追い打ちをかけるかのように、ショ-トの神くんが拙守で足を引っ張って、簡単に先制を許してしまう。


マウンド上で、苛立ちを隠せない白鳥先輩を、松本先輩と久保先輩が、懸命になだめているなんてシ-ンは、今まで見たこともない。


一方の攻撃陣も、1番の切り込み隊長大宮康浩(おおみややすひろ)先輩から5番までズラリと並ぶ、2年生の迫力はさすがだが、それ以降の1年生が登場すると、途端にト-ンダウン。


6番の神くんは打力を買われてのスタメン起用のはずなのに、守備の乱れが、打撃にも影響して、力んで凡打を繰り返し、その後の3人は、私達が見ても、正直打てそうな気がしない・・・。


かくして、試合は7回を終わって3-5とリ-ドを許す、よもやの展開。球場内のざわめきが徐々に高まって来る。


8回、尻上がりに調子を上げて来た白鳥先輩は簡単に相手を抑えるけど、こちらも7.8.9番の下位打線が手もなくひねられて0点。聡志は懸命に食らいついて行ったけど、結局は三振。バッティングは、相変わらず苦手なんだな・・・。


そして、いよいよ最終回。白鳥先輩のピッチングは、もはや危なげないけど、こちらが、この回、少なくとも2点取って、同点に追いつかない限り、明協の秋はここで終わってしまう。そして、それは来年の春の甲子園の出場の可能性が絶たれてしまうということ・・・。
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