好きです、田畑さん!

そういうところ

どうしてこんな遊び人みたいな男に動揺なんかしているの?!


夜神のせいで赤くなってるなんて思われたくない!



早く帰ろう!


早く帰りたい!!



焦りにも似た感情が衝動的に突き上げてくると、あたしはいつの間にか床に落としていた鞄を拾い上げる。


そしてそのまま夜神の側を、顔を伏せて無言で通り過ぎようとした。




「あ、田畑さん!」


だけど突然呼び止められて、あたしは思わずピタッと足が止まってしまった。



その声の主は夜神ではなく、クラスメイトの女の子だった。




な、なんだろう?



今は一刻も早く夜神から逃れたいのに……!



涼しい顔をしてみせるけど、内心ではどぎまぎしてて、あたしは冷静さを失っていた。



気がつくと額にはうっすらと汗が滲んでいる…。



「今ね、夏休みにクラスの親睦会をやろうと思ってるんだけど、田畑さん出席する…?」


よく見ると親睦会の発案者であろう女の子が他にも三人いて、そのうちの一人が遠慮がちに訊いてきた。



「え?……しん、ぼくかい?」



夜神で頭がいっぱいだったところに思いもよらない誘いを受けて、あたしは図らずも戸惑ってしまう。
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