ちゃんと伝えられたら
そう言うと今度はどうも気が抜けてしまって、自分の身体なのに上手にコントロールが効かない。

「やっぱり志保から目が離せない。」

楽しそうに坂口さんが笑う。

「もう私、疲れちゃいました。」

私は何とも締まらない表情でへろへろだ。

「タクシーでも拾うか?」

そう坂口さんは言ってくれたけど…。

気持ちが疲れているだけで、身体は何とかなりそうだ。

「一緒に歩いて下さい。…いつもより遅いかもしれないけど良いですか?」

すると坂口さんは私の指を絡ませてがっちりと恋人つなぎをした。

「もう志保の前は歩かないよ。どんな時にも横に居て欲しいからな。」

「…嬉しいです。仕事もプライベートもずっと一緒に居たいです。」

坂口さんの家は会社からほど近い。

あるマンションのエレベーターに乗った私達はくたくたの身体と気持ちをすり合わすかのように抱き合う。

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