ちゃんと伝えられたら
私が反応する。

「志保ちゃんはずっと兄貴を追いかけていたみたいだぜ。」

「俺達はやっと横に並んで歩けるようになったはずだったんだ。」

綾人さんは上を向いて、大きく息を吐く。

「それに俺も今回の事は志保に確かめたい事がたくさんある。」

綾人さんが優しく私に微笑んだ。

「帰ろう、志保。」

横で道人さんはうなずいている。

「伝える事は諦めてしまうのか?」

私達二人にだけ分かるこの言葉。

私は綾人さんを見つめて、首を横に振る。

「また店の方へおいで。」

そう声を掛けてくれた道人さんに、私は深々と頭を下げた。








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