ちゃんと伝えられたら
「やっと追いつきました。」

私が坂口さんにホッとしたように笑顔を向けた。

「…いや、来る時とは違う理由で早く歩き出してしまったんだ…。」

坂口さんは顎に手を持っていく。

さっきまでの様子と少し違うようだ。

「えっ?」

私は坂口さんを見ながら首をかしげる。

「…あいつが分かったような態度を取るから…。あそこから早く離れたかったんだ。」

それだけの言葉では、私には坂口さんが今考えている事は分からない。

そろそろ会社が見えてきた。

「戻ったら早速会議録を見せてもらおう。」

「はい、大体は出来上がりました。」

私は坂口さんを横から見上げる。

やっと並んで歩く事に慣れて来たのに、それももう終わり。

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